伊藤潤二

読者に絶対的な違和感をぶつけてくる。

自分の顔にそっくりな大きな気球が、首を吊ろうと襲ってくる！なんじゃこの発想。

こんな世界に放り込まれたら狂うしかないのではないか？

　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「首吊り気球」収録

はっきり言って伊藤潤二は怖い。と同時に、そのシナリオの完成度の高さに驚く。

「富江シリーズ」を見る限りでは確実にその世界は広がっているし、「富江」自身も確実に増殖し続けている。しかもその「富江」で伊藤潤二はデビューしている。

うまいのだ。デビュー作の「富江」でその描写のうまさにびっくりした。

こんなにかっこよく動くキャラクターを最近の漫画家ではあまり見なくなった。

何より、その扉絵に（これは今見ればの話だが）すでに何か語られている様な気がする。

俺は恥ずかしながら久々に「すごいなー」と思ったのだ。

　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「屋根裏の長い髪」収録
　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「画家」収録
　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「地下室」収録
　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「うめく排水管」収録

路地裏から聞こえる声。路地裏に潜むものとは？

ラストシーンがすごい。

最後の一こまで読者は恐怖の世界に置いてけぼりになる。 たすけて〜。

　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「路地裏」収録

怖い話を聞いた後、その恐怖を払拭するために大笑いしたくなるでしょ。

それを一つの物語にまとめてしまったのがこの双一シリーズ。

双一はひねくれもんでイタズラズキで子憎たらしいクソガキ。周りの人間は彼に翻弄される。

顔をひきつらしてわらってしまう。

　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「棺桶」収録
　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「楽しい夏休み」収録
　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「うめく排水管」収録

何でしょうこの恐怖。恐怖と言うより気持ち悪さ。

キチガイじみた潔癖性の一家に二つの不吉で不潔な出来事が起こる。

彼はいったいどうなったんかな。

　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「うめく排水管」収録 　

伊藤潤二の発想力にはいつも驚かされる。どんな特撮にも勝る奇想天外なシーンの描写は漫画だからこそできること。

それを描けるのは伊藤潤二だからできること。この漫画は特にそうだ。

　朝日ソノラマハロウィン少女コミック館「屋根裏の長い髪」収録

「富江」シリーズの新作。伊藤潤二の漫画はどこかのジャンルに属するのはもったいない。この１冊にも色んなエッセンスが込められている。注目は（毎度の事ながら）伊藤潤二のストーリーへの追求。脱帽です。

アーカムブックス「２００１年ベストコミック」用に書いた文章に加筆しました。